

提案時パース図 完成時竣工写真
(高田洋三氏撮影)
*上図解説は文末に。
バイク便の音が徐々に近づいてくる・・・
今、配達員が降りた・・・足音が近づく・・・来た!
その日・・・一番最初に手にとった作品は。
今まで見たことがない大きなファイルに入っていた。
受け取り印を押す手ももどかしく、
ようやく茶色の厚紙に包まれたそれを手にする。
とるものとりあえず、厚紙をもいだ。
その中からのぞいた文字・・・
『門のある家』
・・・どくン、どくン・・・鼓動が早まり、急速に興奮していくのを自分でも感じる・・・
門・・・
今回わたしは生活に必要な設備の要望の他に、
ある個人的な思い入れをお願いをしていた。
できれば、「北京四合院(*後述)にある『門』を現代風に
アレンジして取り込んでほしい」と。
その作品タイトルから少し上に目を移すと、
背景には四合院の写真がセピア色にして映しこんである。
間違いなく、あの「門」だ。。。
企画書の表紙、薄紙を開け、いよいよ・・・!と頁をめくると、
「計画分析」と「コンセプト」が書かれていた。
はやる気持ちを抑えて、じっとそれを読むすすむ。
(わたしは本でも説明書でも「前書き」を読むのが好き。前書きには筆者の意気込み、
思いのたけが詰め込まれている。あとがきは結構、みなさま有難うございました的な
筆者もほっとしたであろう要素が強い。)
その中の、ある一文が目を引いた。
「多数の門の要素をもった仕掛けを設ける。
それらを通り過ぎる度にプライバシーが高まる空間構成となる」
ちょっとクラっときた。
この人、四合院勉強してきてる・・・と一瞬にして感じた。
そう、四合院における門とは、まさにプライバシーの入り口。
そして、さらに「門」とは、空間の次元を分けるもので、国によっては
“魔的”ともいっていいほどの強い要素を担っている。
そしていよいよ、意を決して、2ページ目!
・・・間取り図・・・ときたか。うーむなるほど、間取りの希望はOK。。。
?あ、あれ、そこに入り口くるのーーー!そ、そして、そこに中庭ーーーー!!!
驚きはまだまだつづく。
3ページ目。
ついに外観図!!
「う、、、わあああああああああーーーーー!!!!!」
そのまま電話のところに走りより、目をカッ開いたままOちゃんの携帯を鳴らす---。
留守電だが、かまわない。
「おおおおおおお、Oちゃぁああああああーーーーー!!
す、す、す、す、す、ごいのがきたっ。すごいのがきちゃったよぉぉぉぉーー。
あ、あ、あのね、門がね、も、も、も・・・▲×@&●*?+□~~~!!!
と、とにかくいますぐココにきてほしいっ。ガチャッ!・・・ツーツー・・・」
あとから「なんだか分からなかったけど、すごかったらしいね」とOちゃんからの
電話があった。わからなかったが、この感動は実況中継できたようだ。
電話を切った後も、興奮は冷めやらず。
「すごい・・・わ、コレ。」:30回は間違いなく言った。
「きちゃったよ・・・コレ。」:同じく30回は言った。
「はぁーーーーーーーアイヨ~・・・」:その後2日間ずっとこのタメイキ。。。
・・・・・こんなに、こんなに、、、人をしあわせにしてしまう
プレゼンテーションってありますか・・・・・・?
(小さい頃から、わたしは気に入ったものがあると、どんなに大きいものでも
「持って寝る」ことにしている。。。)
(後日談:ちなみに、翌日、もう1件「すげぇ!」を連発してしまう作品がとどき、
このコンペのクオリティの高さと仕事の緻密さに脱帽。
この人の仕事は完璧だろうなと思わせる、ものすごい出来のモックアップでした。
こちらも・・・持って寝てしまいました・・・(白状))
その作品以外の7作品も、どれもううう~~~ん!!!!!と力作、はっ・・・とするような
驚きの塊
でした。全ての作品を大切に宝物として保管し続けたいと思います。
質疑応答の掲示板の参加いただいたそれぞれ建築家とのやり取りも全て。)
これは、もう出会ってしまった。
その後3日間、ほとんどすべての時間を投入してコンペ作品を綿密に検討し、
最終的にはマトリックスにもしてみたが、やはりキテしまった。
作品を通して“すべての波長が「ガキィーン」”と合ってしまった!というのが
正しいかもしれない。(しかもこちらから一方的に(笑)!)
3日後、第一回目の訪問に行った。
これが、これからお世話になる 筒井紀博空間工房 である。。。
*冒頭写真解説*
この二つの図を見比べるだけでも、どれだけ当初のコンセプトイメージがぴたりと狂いのないものであったかが伝わると思う。内部に関しても最初の提案からほとんど変更はなかった。
⇒当初提案内部図 ⇒完成内部図
(*四合院とは)
四合院というのは北京地方の標準的住宅の建て方である。
四角の中庭を囲んで北側に南向きの母屋があり、東側に西向きの、
西側に東向きのそして南に北向きの建物があり四合院を形成している。
筑波大の 藤川研究所 都市ストック評価研究室 というところで
四合院の研究もされている。
(これが筑波大学院の中でも、私などに縁深い「東アジア研究科」とかでなく、
「システム情報工学研究科」という、いかにも理系なところで研究されているのは、
やはり四合院を構造物としてとらえているためだろうか。)
学会でも論文が発表されている模様。
谷村秀彦ほか 「伝統的都市の現代化における空間制御技術に関する研究
?北京を事例として」
(『住宅総合研究財団研究年報』26、pp.131-142、2000年3月)
藤川昌樹ほか 「四合院住区の空間構成?
北京市豊盛地区の構成原理に関する研究・その3?」
(『日本建築学会大会学術講演梗概集』E-2分冊、pp.227-228、2000年9月)
藤川昌樹ほか 「北京市豊盛地区における四合院住区の空間的秩序」
(『日本建築学会計画系論文報告集』555、pp.145-150、2002年5月)
コメント
す・すごいっっ!!出来上がった家の写真を初めてじっくり見てしもた・・すごいね~、カッコええね~。中国まで買いに行った門が、、ぴったりはまってる。ここの家の門になるために、生まれて来たって言ってもええくらい。お見事です。。いつか、いつか・・「華門楽家」を見てみたいです。門も触ってみたいです。あっ、はりこちゃんのおかっぱも見てみたいです。
黒豆お母ちゃん、ありがとうです。よかったらこちらも見てくださいませ[E:cat]http://allabout.co.jp/house/architect/closeup/CU20060117B/index.htm